東出昌大映画『WILL 遺言』感想

映画『PERFECT DAYS』から日を置かずに、

東出昌大を追ったドキュメンタリー映画『WILL 遺言』を見てきた。

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東出昌大(以下、36歳で「くん付け」も失礼かと思うが、我が家ではずっとそう呼んでいるので、東出くんとする。ちなみに本作内では親しい人からはデックンと呼ばれていたw)が2020年1月に若手女優との不倫報道後に事務所を契約打ち切りになり、その前後からもともと趣味としていた狩猟活動にのめり込んでいく様子を追ったドキュメンタリーである。

 

監督・脚本・撮影・編集は、ほぼエリザベス宮地氏一人によると思われる。

 

映画は比べるものではないと思うが、『PERFECT DAYS』といろいろ対照的な映画だった。どちらが面白かったかといえば、どちらも面白かった。

 

以下、備忘録的に感想を思うままに書く。

 

・尺が長い。2時間20分でちょっと冗長に感じた。もっとカットすべきところはカットすべきだと思うが、前述したように一人で編集しているから、カットできないのだと思う。これは本の編集でもよくあること。第三者が見て、切るべきところは切っていったほうがメッセージは伝わりやすくなると思う。(この点『PERFECT DAYS』は、CM制作チームにより、大所帯&大予算で作られたと推察されるが、ムダなところはそぎ落とされていてキレイにまとまっていたと思う)

 

・とにかくカモシカやイノシシなど、獣を猟銃で殺しては、皮をはいだり、内臓をさばくシーンが多かった。ドキュメントとはいえ、普通ならあまり見ないので新鮮だったが、彼にとってはもはや日常的な作業に近い感じで、息遣いこそ粗いものの、表情は素のままなので、最初はサイコパスっぽい感じもした。(後半見るにつれ、その感想はなくなるんだけどw)

 

・一方で、「殺される動物がかわいそう」だと思っていることをカメラの前では告白しているのも印象的だった。彼の仲間の漁師たちは「そんなふうに思っているなら狩りをするな」とも。

 

・映画の中で、取材に来た週刊女性の記者&カメラマンとも仲良くなっていく、というくだりがあるのだが、こうした本来は敵対してもいい人も含めて、取り巻く人々(狩猟会の年配男性メンバーたちや狩猟の師匠、近所のおばちゃんなどあらゆる人)が彼のことを好きになってしまうのが印象に残った。それは画面から伝わってくる。そして狩猟仲間は共通して、「狩猟は仕事じゃない。彼の仕事は俳優。俳優として、いい仕事をしてほしい」と言っていた、とても好かれているんだなと感じた。

 

・映画のパンフレットは、まったく面白くない場合と反対の場合があるが、本作では、監督や作中に登場する先輩漁師のインタビューなどもしっかり掲載されており、本作を補完する意味でも買うべきものだった。買って良かった。

 パンフを読むまで、個人的に付き合いのある監督が、社会的に抹殺された東出くんを援護するために映画を作ったのかなと思っていたが、まったく違っていた。「狩猟」をテーマに、スキャンダル発覚前に集客も見込んで人気俳優東出にオファーをしたものの、事務所からイメージを理由に却下されていたものが、スキャンダル発覚後に、東出くんから逆オファーを受けて企画が進んだというものだった。

 

・狩猟で銃をうつたびに、画面がブレるのだが、そんなに揺れるほどの衝撃なんだと思った。

 

・一緒に観に行った妻の感想は「離婚した元妻・杏は男を見る目がないと思っていたが、映画を観て、むしろ男を見る目があったんだ」というもの。これに意味するところは、いい意味で「東出くんが想像以上に生物としてのオス(雄)で、本能の赴くままに生きる存在だった」ということ。逆に言うと、普通に都会で生活していくのは無理だったのではないかとも言っていた。私もそう思う。

 

・本作の最後のほうで、「なぜこのドキュメンタリーの制作を逆オファーしたのか」を説明するくだりがある。本人によれば「うつだったんだと思うが、そんな状態の中で離ればなれになった子どもたちが後から観たときに父としての姿を残したかった(=このまま死んでもいい)」というようなことを言っていたと思うが、実際は自然の中の生活になるにつれ、元気・活力を取り戻していくのが興味深かった。

 

こんなところかなぁ・・・。

 

3月に観に行く予定の若松プロダクションを描いた『青春ジャック』にも東出くんは出演しており、去年公開の『Winny』も観ているから、なんだかんだでけっこうな頻度で東出くん映画を観ていることに気づいたのであった。